近年、科学技術の進歩により治療手段が多様化しています。タケダは、高い技術力を持つパートナーと協力し、新しい治療手段の開発に取り組んでいます。
- Case.01
- JCRファーマ×タケダ*
「次世代酵素補充療法の未来をひらく」
*本共同研究開発は、現在は既に終了しております。
脳の“関所”、血液脳関門を突破して
薬剤を届ける
JCRファーマ株式会社とのパートナーシップのもと、希少疾患「ライソゾーム病」に関する次世代酵素補充療法のグローバルでの協業を進めています。
ライソゾーム病は、遺伝子の変異が原因で、細胞内で酵素がうまく働かないことにより発症します。治療のため、必要な酵素などの成分を中枢神経(脳および脊髄)に届けたいのですが、人の体には、血液脳関門(けつえきのうかんもん)と呼ばれる脳を守るための“関所”があり、脳の神経細胞にとって必要のない血液中の物質を通さない仕組みが存在しています。そのため、高分子化合物である人体内の酵素は、血液脳関門を通過できません。
しかしJCRファーマが開発し世界で初めて実用化した、体内のねらった部位に必要な薬物を送り届ける血液脳関門通過技術である「J-Brain Cargo®」を用いることで、中枢神経領域まで治療に必要な酵素などの成分を到達させられます。
複数の疾患に対して、応用が期待される
JCRファーマがもつ、体内のねらった部位に必要な薬物を送り届ける技術は、脳が血中の鉄分を取り込む仕組みを利用することで、血液脳関門を通過して、治療成分を中枢まで運びます。ライソゾーム病はおよそ60種類あり、1つのライソゾーム病に対する治療薬の開発で得た学びが他の複数のライソゾーム病に対する治療薬の開発に役立つと期待されています。
ライソゾーム病
肝臓の腫大、心臓の肥大、骨の変形、関節の拘縮、けいれん発作・発育不良・知能障害などを引き起こす疾患の総称。現在は約60種類が知られている。
次世代酵素補充療法(調整中)
テキストが入りますテキストが入りますテキストが入りますテキストが入ります
グローバルでの開発
タケダは、米国外(日本とアジア太平洋地域の一部を除く)での次世代酵素:JR-141の承認取得後、当該地域において独占的に事業化を行う。
高分子化合物
高分子とは小さな分子がたくさんつながった巨大な分子のこと。一般的に、分子量が約1万以上の物質を高分子化合物と呼ぶ。
- Case.02
- QST×エーザイ×小野薬品×タケダ
産学連携コンソーシアムで
「脳内の可視化技術を実現」
脳内の異常タンパク質の蓄積を、
“見える化”する
脳内の異常タンパク質の蓄積状況を映し出す、画像検査用試薬の開発に挑戦しています。これは、QST(量子科学技術研究開発機構)が主導する産学共同体制「トータルステージ脳疾患創薬アライアンス」の下で、QST、エーザイ、小野薬品工業との研究開発に参画しているもので、これまでに、通常は脳内で必要な機能を果たしているαシヌクレインというタンパク質が、異常になって凝集・蓄積する多系統萎縮症の患者さんの生体脳でどのように分布しているかを高感度で画像化する試薬の創出に成功。多系統萎縮症の解明および治療薬開発に向けて、大きな一歩を踏み出しました。
同業他社が、“創薬の未来”のために
手を携える
複数の企業が自社の強みを活かしながら互いに協力するコンソーシアム形態は、迅速かつ効率的に目的を達成できることから、様々な研究開発の場に導入されています。製薬会社3社が協力し合う背景には、脳内で異常になって蓄積するαシヌクレイン凝集体などのタンパク質を可視化する画像診断技術の確立が、将来の治療薬の開発において不可欠であるという思いがあります。
可視化技術は将来の病態解明
および治療薬の開発の最初の一歩
多系統萎縮症と同じ神経変性疾患のひとつであるアルツハイマー型認知症では、原因と考えられる異常タンパク質(アミロイドβ、タウ凝集体)の可視化技術が登場したことによって、病態解明および新薬開発が急速に進んでいます。多系統萎縮症についても、病態解明と新薬開発の加速化が期待されます。さらに、可視化技術を治療効果の判断に活用することで、新薬による治療がどの程度奏功しているかが検証可能になります。可視化技術をさらに究めることで、より優れた効果が期待できる医薬を提供できるように挑戦を続けます。
異常タンパク質
加齢などさまざまな要因で本来の機能を失った、あるいは機能が低下したタンパク質のこと。多系統萎縮症、パーキンソン病、レビー小体型認知症などにおいては、通常は脳内で必要な機能を果たしているαシヌクレインというタンパク質が異常になって脳内に蓄積し、症状を引き起こすとされています。
多系統萎縮症
神経変性疾患のひとつ。筋肉が硬くなり、運動障害や、血圧・膀胱の機能不全などが生じる進行性の病気。
神経変性疾患
何らかの原因により脳や脊髄の神経細胞のなかで、ある特定の神経細胞群が徐々に傷害を受け脱落してしまう病気のこと。スムーズに運動ができなくなる、体のバランスがとりにくくなる、認知能力が低下してしまうなどのタイプがある。
- Case.03
- ペプチドリーム×タケダ
「薬を効率的に運ぶ」
脳内および筋肉内に化合物を効率的に
届ける「ペプチド-薬物複合体」を開発
ペプチドリーム株式会社とのパートナーシップにより、ペプチドと化合物を組み合わせた「ペプチド-薬物複合体」の開発に挑戦しています。
ペプチド-薬物複合体は、「運び屋」の役目をする部分の分子量が小さいため、通常の化合物が届かない、または届けにくい部位にも、薬剤を届けやすいという特徴をもちます。そのため、血液脳関門を突破して中枢神経内部に到達させたり、通常は入り込みづらい筋肉内部に速やかに届けたりすることができます。こうした特性から、神経筋疾患および、神経変性疾患といった病気に対して、有効な治療薬を開発できる可能性があります。
「キャリアーペプチド」+「化合物技術と
候補物質」、得意分野でタッグ
このプロジェクトにおいて、ペプチドリームは脳内および筋肉内に化合物を届けるためのキャリアーペプチドを提供し、タケダは化合物合成技術と様々な候補物質を提供します。「1日でも早く結果を出して、今も疾患と闘う患者さんのもとに治療薬を届けたい」という強い意志を原動力に、日々研究に邁進しています。
過去に断念した化合物に光を当て、
新薬としての可能性を探る
これまでは、中枢神経内部や筋肉内部に薬剤などの化合物を効率的に届ける方法がなく、そのため有効な治療薬にすることができなかった化合物が数多くあると考えられています。研究室で生み出された化合物(薬の候補)が、新薬として発売される可能性は3万分の1(0.003%)*とされます。今回のパートナーシップで挑戦する「ペプチド-薬物複合体」は、かつて治療薬にならなかった数々の化合物にも再び光を当てることによって、これまでにない新薬を生み出す可能性を秘めています。
*第1回 医薬品開発協議会 ; 日本製薬工業会, Oct.27, 2020
ペプチド
アミノ酸が2個以上結合した物質の総称を「ペプチド」といいます。アミノ酸が50個以上結合したものは「タンパク質」と呼びます。
化合物
ここでは「治療薬」そのものを指す。ペプチド自体に治療効果はなく、化合物を適所まで運ぶための「運び屋」の役割を担う。
今回紹介したものは、現在取り組んでいるパートナーシップのごく一部です。タケダは、これからも企業・学術機関と連携して様々な課題に挑んでいきます。