• タケダ ・トリオ・トーク Vol.04

製薬業界に求められる、
希少疾患への取り組み

製薬業界ではいま大きな環境変化が起こっています。比較的多くの患者さんを抱える疾患の医療水準向上の一方、薬の開発が待たれる希少疾患や難病、既存の薬では十分な対処ができていない疾患への貢献などの対応が近年の医薬品創出の課題となっています。

そして、薬の提供以外も含めた患者さんのニーズを的確に把握し、薬を届けた後のケアも求められるようになっています。こうした変化を背景に、タケダの取り組みは大きく飛躍しようとしています。

一つの薬が患者さんに届けられるまでに15年、20年という長い月日を要することもあり、長期的な視野での取り組みが求められます。タケダは患者さんたちのより良い未来を切り拓くために、バリューチェーンの各所で患者さんと直接対話をする機会を増やしています。この対話で実現できることや、各バリューチェーンでの活動について、異なる部門の3名に話を聞きました。

製薬会社のバリューチェーン。薬の研究・開発・製造の次に、適切な医療を届けるために、その薬の持つ医療価値の最適化をめざすメディカルアフェアーズがあり、疾患啓発などを行うペイシェントアドボカシーといった活動が続く。

バリューチェーンの各所で
活きる「患者さんの声」

國貞 理恵

リサーチ
ニューロサイエンス創薬ユニット

國貞 理恵

研究分野での患者さんとの対話を進める

松石 美智子

ジャパンメディカルオフィス

松石 美智子

デジタルによる患者さんの個別化医療を目指す

柿木 聡

医療政策・
ペイシェントアクセス統括部

柿木 聡

患者さんに近い部署で疾患啓発などを行う

3人の仕事と、患者さんとの対話について教えてください。

【國貞】 私はニューロサイエンス創薬ユニットという、神経科学の研究部門にいます。
これまで私たち研究者は、学術論文を読んだり、医師に患者さんの症状や様子をお聞きしたりと、間接的な形で病気を理解しようとしていました。ですが今は、研究者と患者さんが対話をするためのツールや機会の創出に注力し、それを活かした創薬研究を目指しています。この背景には、真に患者さんのニーズに応える革新的な薬を作り出すためには、研究の早期段階でも患者さんとの対話が大事だという考えがあります。

【松石】 私はバリューチェーンの中流に当たる、メディカルオフィスで働いています。主な仕事は産官学の連携やデジタル推進です。
特に、デジタルを活用した患者さんの課題解決方法など、個別化医療の実現を目指しています。 近い将来、デジタルデバイスなどから取得したデータが患者さんに還元され、患者さん自身が治療により主体的に関われるようになっていくはずです。それをどう患者さん視点で価値あるものにできるか、ということを日々考えています。

医療現場では、医師と患者さんの対話の時間は限られています。
そのため、診療時間以外の患者さんの日常生活から得られるデータは、治療やその後の生活を送る上でとても役に立つと考えています。例えば患者さんの1日の歩数を見て、「こんなに歩けているんだ」と思っていても、実はその日だけ歩かなければいけない事情があっただけで、体力的には大変だった、というケースも現実にはあります。そのため、患者さんから直接得られる情報=「Patient reported outcome」にも注目し、データをより正しく読み解くための仕組み作りに重点を置いています。

【柿木】 私は患者さんとの距離がさらに近い「ペイシェントアドボカシー」を担当する医療政策・ペイシェントアクセス統括部で、診断率向上プロジェクトの推進や、患者さん向けの資材やアプリの作成を行っています。具体的なプロジェクトの活動としては、タケダが患者さんに提供できる価値をより高めることを目指して、ウェブサイトの企画運営や患者会のみなさんとの対話などを行っています。

タケダは希少疾患を重点領域のひとつに位置付けており、その患者さん一人ひとりの悩みを少しでも詳しく把握するために、患者さん自身の声を聞くことを大切にしています。実際、ペイシェントアドボカシーの部門は2019年に少人数で立ち上がりましたが、今は10人のチームに成長しました。

対話の中から生まれる
「患者さん視点」の気づき

患者さんとの対話から、どのような気付きや学びがありましたか?

【國貞】 一言でいえば、「これまで見えなかったこと」を知ることができました。
医師のみなさんから学ぶことはたくさんありますが、医師は多くの患者さんを診ているので、どうしても総合知としての情報になります。同じ疾患でも、すべての患者さんが同じ症状ではなかったり、ばらつきがあったりする場合はなおさら、個々の患者さんにどんな困りごとがあるのか、という細かな点が重要です。対話を通じてこのことに気づけました。

実は当初、研究者が患者さんと対話をすることで早期解決へ過度な期待を持たせてしまう懸念や、患者さんと直接お会いするからこそ、絶対に失敗できないという恐怖心が芽生える懸念がありました。ですが実際に対話をしてみると、モチベーションが高まりました。驚いたのは、「たとえ自分の治療には使えなくても、次世代の患者さんに貢献したい」という方がとても多かったこと。そういう人たちに支えられて、良い薬というのが生まれていくのだな、と感じています。

【松石】 希少疾患は、その名の通り患者数がとても少ないので、1人の声が相対的に重要となります。症例が少ないからこそ、すぐに診断がつかず長い間悩まれる患者さんも多いと聞きます。より多くの声を集めることが疾患啓発に繋がり、患者さんが早期に診断を受けることで悩む時間を短くできる可能性があります。

病態が一人ひとり異なるので、全てを把握できないかもしれません。ですが少なくとも一方通行ではないやり方で、悩みに寄り添うような世界観を提供できればいいなと思っています。タケダは今、従来の創薬と薬の供給に加えて、患者さんに対するサポートも届けており、すごく良い風潮だなと感じています。

【柿木】 最近では10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせて、従業員向けの疾患啓発イベントを行い、そこでうつを経験された方にメンタルヘルスの重要性や当事者の想いを話していただきました。参加者からのフィードバックも良好で、製薬会社の従業員として、働く社会人の立場として、当事者の声を聞いて自分にできることを考える機会になりました。

また、疾患ごとの患者コミュニティ(※)に足を運んでお話も伺いました。実際にタケダが出しているアプリの改善要望を患者さんからもらい、それをすぐにアプリの開発担当にフィードバックをして、改善を行いました。患者さんとともにあるということを、これからも心がけていきたいです。

※患者コミュニティ…疾患ごとに患者会や患者支援団体など、患者さん自身や家族のサポート、病気の啓発を行うことを目的にした集まり

次なるキーワードは
「デジタル」と「横のつながり」

最近は他社との協業機会も増えているようですが、どのような取り組みがありますか?

【國貞】 最近では、第一三共さんと一緒に研究者が患者さんとお会いするときに必要なマインドセットや守るべきマナーを記載したガイドブックを一緒に作成しました。また、自然に会話できる場をたくさん作り出すために、第一三共さん、協和キリンさん、参天製薬さんとタケダが共同で「Healthcare Café」という取り組みを始めました。

以前に比べて、競合しない部分では協業がしやすくなってきました。例えば希少疾患は患者数が少ないこともあり、製薬会社毎に同じ患者さんを呼び、同じようなことを聞くのは患者さんの負担になります。患者さん視点で、企業の垣根を越えた連携を増やしていきたいですね。

【松石】 早期の研究段階であれば製薬会社が協力しやすく、それが患者さんのプラスにもなる、というのは大変良い取り組みですね。そうした連携の成功事例は、日本から世界に発信できるかもしれません。例えばデジタルツールは、国外の患者さんにも届けやすく、役に立てる可能性があります。それを迅速に届けていく体制が構築できるのも、タケダの強みです。

【柿木】 「患者さんのために」という共通認識があれば、製薬会社だけではなく、患者さんのライフスタイルに関わる他業種とのコラボレーションもありうると思います。

データ&デジタルの活用は、患者さんにどのような価値をもたらしますか?

【松石】 私たちのチームで注力しているのは、メタバースやVR(仮想現実)のテクノロジーを活用することです。例えば、VRを使った疾患の疑似体験などです。また、患者さんとの面談を、アバターを使ったメタバース空間で行えば、お顔を見せているときには言えない正直なコメントができたりするかもしれません。

最後に、今の取り組みによってどのような未来をつくりたいですか?

【國貞】 研究者だからと活動の幅を決めるのではなく、探求心を持ってチャレンジしていきたいです。やらない理由を考えるのではなく、どうやったらやれるかという方に発想を転換していく、そういう意識が大事だと感じます。製薬のバリューチェーンの上流から下流まで全体を通じて、各部門がそれぞれ新しい挑戦をしていることが励みになっています。

【松石】 タケダの魅力は、変わり続けているところです。だからこそ、240年以上も続いているのかもしれません。変化に対して前向きに考え行動できる風土をもっと醸成していきたいです。

【柿木】 ただ薬を届けるのではなくて、患者さんの日々の健康や、未来の幸せに寄与することをやっていきたいです。いろんな部門の仲間との連携によって、そういったビジョンから逆算した解決型の思考になってきているので、これが次の挑戦ができるきっかけになるのではないでしょうか。これからも挑戦を続けていきます。

PROFILE

リサーチ
ニューロサイエンス創薬ユニット

國貞 理恵

患者さんの声を活かした創薬研究を探究。研究者と患者さんとの対話におけるツールや機会を創出している。

ジャパンメディカルオフィス ​

松石 美智子

患者さんへのデジタルを活用した解決策を研究。産官学との連携やデジタル推進をメインに、患者さんの個別化医療の実現を目指している。

医療政策・
ペイシェントアクセス統括部

柿木 聡

患者さんに近い部署で、イベントやウェブサイトを運営。疾患啓発などを行うべく、患者コミュニティと連携もしながら社内外での取り組みを進めている。​

本記事は2022年12月までの内容に基づいて記載。

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